石垣島に着てまだ間もない頃だったと思う。
葬儀を手伝った。
故人は石垣に来て数十年になる。
不思議ことに彼が誰で何処からやって来たのか誰も知らない。
住民票は石垣になく、本籍を訪ねると毎回違う場所を話していた。
葬儀に集まったのは極わずかな知人とボランティアだけ。
誰も彼が何処で生まれ、何処で育ち何故石垣にやって来たかのか、誰も知らない。
いくらかお金に余裕があった彼は保険証を持たず病院での支払いは現金で行っていた。
彼の部屋に遺されていたのはガスコンロ、洗濯機、テレビ、冷蔵庫、そしてわずかな食料と衣服。
彼が撮った、あるいは彼が撮られた写真はない。
彼がやりとりしたであろう手紙もない。
公共料金の領収書ですら、ない。
彼が一体誰であったのかすら、果たして僕らが知っている名前、それが本名だったのかすら、誰にもわからない。
最後に彼は「今日はゆっくり話しをしたい」と言い、よく訪ねてくる友人と数時間話しをし、別れたその後亡くなった。
その際にも決して自らの出生を語る事は無かった。ただとりとめのない話しをし、談笑を楽しみ、別れ、一人亡くなった。
僕がここにこうして彼の事を書き記すのは、孤高に生きた彼の最後を汚してしまう事なのだろうか?
僕にはわからない。
2008/01/28
時には昔の話を
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